撫子ちゃんへ捧げます

こんな可愛い撫子ちゃんをアイコンでいただいてしまったので思わず……



「せっかくにいさまと一緒のおでかけだったのに、もう終わっちゃいました」
 キミはよく動く瞳をきらきらさせて残念そうにつぶやく。
「ほら、じっとしておいで。まだぬれているじゃないか。キミはすぐ風邪をひくんだからしっかりかわかしておかないとね」
――ボクも残念だよ。明日が来なければいいのに。今度はいつ会えるだろうね。キミはすぐに大きくなってボクのことなんか忘れてしまうだろう? 

「にいさまを忘れることなんてありません」
 ちょっぴりすねた口調でキミはにっこり笑う。
――そのキミの口癖も、ちらりとのぞく小さな歯も、笑うたびにふんわり揺れる髪も、みんな大好きだよ。できるならキミを連れて帰ってしまいたいくらいだ。

「もう少しだから動かないで。キミによく似合っているよ、この着物。ダメにしちゃもったいないだろ」
「だってくすぐったいんです」
――そんなとろけそうな顔で笑わないで。せっかく帰ると決心したのに、また延ばしてしまいそうになるから。

「にいさまもぬれてるじゃありませんか。まつげにも雨粒が落ちてます」
 タオルをボクの手から奪って一生懸命拭いてくれようとしている。がんばって背伸びして。
 ボクがいじわるしてつま先立ちになったら、ほっぺをぷうっとふくらませて上目づかいにこう言うんだ。
「もう、にいさまはいじわるです!」
――わかってる? キミのその声が聞きたくてボクは意地悪してしまうんだよ。

「きゃあ」
 くすぐったそうな声を上げるキミ。
「キミを抱き上げてしまおう。こうすれば届くだろ。大丈夫、ふんわりと陽だまりのにおいがボクをくすぐっても、気を取られて落としたりはしないよ」

――きゅうっと抱きしめてしまおうか。ほら、キミのほっぺはなんてやわらかそうなんだ。
――メレンゲ細工のような声でくすぐったいなんて言うんじゃないよ。ほろほろと本当に甘いのかどうか、確かめたくなるじゃないか。

「そんなに困った顔をしないで。もうしばらく極上の砂糖菓子を味わう時間をボクにちょうだい」

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